The Characteristics of Amphibian in Rural Landscape and Rural Planning for Amphibian Conservation
The Characteristics of Amphibian in Rural Landscape and Rural Planning for Amphibian Conservation
S. Osawa
Abstract
1 「田んぼにカエル」はいつまで続く? 我が国の水田における生物多様性の高さは,本来成立 していた自然湿地が水田という人工的な湿地に置き換わ ることで,それまでの湿地性生物が多く移り住むことが できたのが主要因の一つとなっている。原生自然が水田 を含む農村環境に作り変えられた時,1住むことができ なくなった生物,2極端な変化無く居続ける生物,3新 たな環境に対し能動的に勢力拡大した生物,がそれぞれ 存在したはずである 。最後の勢力拡大した生物とは, 農村という草原(水田や草地)~疎林(薪炭林)といっ た遷移ステージの若い環境が,定常的に存在するように なったことで有利になる性質を持つ生物である。すなわ ち,それが自然的であれ,人為的であれ,攪乱により一 時的に生じる明るく開けた空間を使って,「それっ!」 と繁殖を行う生物であったと考えられる。止水域繁殖型 の両生類,特にカエル類の多くはこれに含まれ,農村で の水田=「浅い陽光の一時止水域」の出現は,その日 本における生息分布上の大きな転機になったはずであ る 。だからこそ,“これまでの農村”は事実カエル類で 賑わい,また我々の水田での生き物体験の記憶において 圧倒的にカエル類が強く印象に残っているのである 。 ここで“これまでの農村”としたのは,人が水田を拓 き,両生類がそこで「それっ!」と数を増やし,さらに その姿や鳴き声を人は農暦や四季の巡りの兆し(例えば 啓蟄等)に用いたり,遭遇や手に取った瞬間の感触や感 動を記憶として残すという,相互に乗り入れた密な関係 が今日では崩れてきているためである。開発による農地 消失,近代的な圃場整備と集約的な農業スタイルの敷衍, 道路や河川水系等の整備,耕作放棄等の様々な要因が指 摘されるが,基本的には繁殖水域の消失,非繁殖期の生 活空間の消失,繁殖空間と生活空間の分断,農薬・外来 種等の影響である。この内,繁殖水域の消失や生活空間 との分断は注目されることが多く,幾つかの対処策が提 案・実践されている。一方で,非繁殖期の生活空間その ものの質的量的な劣化は,意外と知られていない。 農村のカエル類は,変態上陸後は基本的には陸上生活 となる。水田周りでカエル(成体)を多く見かけるのは, 捕食者からの逃避や体内水分保持のために,水辺が傍に ある土の陸域を好んで生活空間としている種がいるため である。その陸域の代表は,農村に普通に見られる水田 の土畦であり,素掘りの水路や小川の両岸である。陸域 の素材が健全な「土」であることが重要で,植生の成立 は隠れる場所を提供するとともに,餌資源となる昆虫等 の無脊椎動物の豊富な存在も保障するものとなる 。し かし,これら“普通の”畦や水路や小川が,いかに今日 の農村には少なくなったことだろうか。例えば 100m四 方からなる 1ha 区画水田の整備は,畦畔の総延長を大 きく減らすものであり,さらに畦まで遠い区画中心部は 非繁殖期にはカエル類にとって魅力のない空間となって いる可能性もある。また,畦畔への強度の除草剤散布の 影響は,論を待たない。 非繁殖期の生活空間が健全に維持されているか,とい う視点で改めて今日の農村環境を見つめ直す必要がある のだろう。さらには越冬空間(例えば冬季も枯れず一定 の水深がある泥底の水域,空石積み等の多孔質環境)の 質的量的な劣化も,両生類相の貧弱化に関与している可 能性もある。彼らの生活史に即した農村域での空間利用 について,今後とも知見の蓄積が求められる所以である。 いずれにしても「田んぼにカエル」と,これまで当た り前と思っていた図式が,既に大きく崩れているのは事 実である。いっそのこと「田んぼにカエル」の認識を我々 は捨て去ってしまうのも一手であるが,農村計画におい て生態的安定性とそれによる生態系サービスの享受は, 豊かな農村の創出における大事なテーマでもある。農村 において多くの鳥獣蛇虫の腹を満たしてきた両生類,ま た我々もその存在を当然の如く享受してきた両生類が, 農村で暮らし続けるための計画論的視点を考えてみたい。 2 棚田という新天地の生物多様性 低地域の自然湿地が水田に置き換わったのに対し,棚 田,特に山腹・山麓部等の本来は乾性立地に拓かれた棚
