Superplastic-like behaviour controlled by transgranular deformation in metallic solid solutions
Superplastic-like behaviour controlled by transgranular deformation in metallic solid solutions
Tsutomu Ito
Abstract
超塑性とは,材料が大きな均一伸びを示す変形現象のことを 指す 1)。古くは紀元前 2500年頃のトルコで砒素青銅(Cu– 10 mass% As合金)の塑性加工に超塑性現象が利用されていた2)。 超塑性現象に関する基礎研究は,20世紀前半に行われた Bengough3),Jenkins4),Pearson5)らの仕事を先駆とし,1990 年以降特に活発化した。 その後,超塑性は一体成形,ニア・ネットシェイプ成形が 可能な塑性加工法として,航空・宇宙,運輸,建築などの分 野で実用化が進み,軽金属に適用した事例 6),7)も報告されて いる。 超塑性現象として認知されているのは,微細粒超塑性 2)(構 造超塑性 2)と呼ばれることもある),内部応力超塑性 2),8)お よび,高速超塑性 2)である。高速超塑性は主たる変形機構 から分類すると微細粒超塑性に属するが,本稿ではNiehら 2) の著書と同様に高速超塑性を独立した超塑性現象として分類 した。これらの超塑性現象の中で超塑性成形に用いられてい るのが微細粒超塑性である。微細粒超塑性の発現要件は,微 細粒組織(10 μm以下)と適切な変形条件(温度および,ひ ずみ速度)であり,具体的には融点の1/2以上の温度と10-4 s-1 程度の比較的低いひずみ速度,さらに,超塑性変形中にも微 細粒組織を維持することが必要とされている 9)。 他方,生産性の観点から,なるべく低温かつ高ひずみ速度 での成形が望ましく,そのためには結晶粒を微細化するのが 最善である 2),10)。昨今,微細粒材料の創製 11)17)が盛んに試 みられているのは,このような背景による。 微細粒超塑性成形における問題点の一つは,微細粒材料の 製造に要する高いエネルギーコストである。例えば,商用 5052アルミニウム合金冷間圧延板の単位面積当たりの価格 を 1としたとき,超塑性材料の価格比は,5083合金で 3.1, 2024合金で4.6,7475合金で10.0,8090合金で13.6,2024系 複合材料で26.4である 18)。 著者は,この問題を打開する一つの可能性として,Class I 固溶体に注目している。Class I固溶体の高温変形では,ひず み速度が応力の約3乗に比例し,粗大結晶粒のままでも巨大 伸びを発現しうる 19)23)。よって,Class I固溶体は,超塑性 材料の製造工程の簡略化をもたらすことが期待される。 詳細な変形機構が議論されていないものも含まれるが,著 者以外にも粒界すべりの影響が少ないと考えられる粒径 75100 μmのミクロ組織から構成される材料(W, Nb, Al, In, Pb, Au, Fe, Mg, Cu, Ti合金)において,変形の応力指数が約3 となり,巨大伸びが得られたとする報告 24)40)が存在する。 さらに,粒径が 100 μm程度の金属間化合物(Ni3Al, Ni3Si, Ti3Al, Fe3Al, FeAl)においても,変形の応力指数が約3とな り,巨大伸びが得られたという報告 36),41)~47)も存在する。 このように,巨大(超塑性)伸びを得るには,微細粒組織を 必ずしも必要としないことが着々と判明してきている。ま た,最近では,Class I固溶体に分類されるAl–Mg合金を用い た高温高速ブロー成形による自動車部品の生産が始まってい る 37)。 そこで本稿では,著者が注目するClass I型のアルミニウム 固溶体とマグネシウム固溶体で見出された巨大伸びの特徴に ついて紹介する。
