A special issue for computational rheology
A special issue for computational rheology
J. Takimoto,T. Kajiwara
Abstract
レオロジー学会誌で「計算機レオロジー」の特集の企画を担当した立場から,この分野の現状と将来の展望を簡単にご紹介 したいと思います. いわゆる電子計算機が開発されてから既に半世紀以上が経過し,その間の性能向上と低価格化はまさに桁違いです.さらに 計算手法も先人の努力により大きな進歩を遂げてきています.そのため,従来不可能とされて来た計算が可能になった例も多 数あり,多くの分野で計算機シミュレーションは実験・理論とならぶ重要な研究手段となっています.レオロジーの分野も例 外ではなく,計算機による研究は近年非常に活発です.シミュレーションでは,実験で実現出来ないような理想的な条件でのデー タ,あるいは実験で得られないような詳細な構造や流動のデータが得られるため,メカニズムの理解にも大きく貢献できるの が特長の一つです. レオロジーの研究に計算機シミュレーションを用いる場合,これまで大きく 2つのアプローチがあり,本特集号にはほぼ同 数ずつ掲載されています.一つは,物質の変形あるいは流動下でのミクロな内部構造(高分子の絡み合い,種々の相分離構造, 分散粒子の凝集構造など)をシミュレーションで予測し,それからレオロジーを予測するものです.レオロジーで重要になる のはこれらの構造の最も遅い運動ですが,そのような遅い運動をそのまま扱うのは,計算時間の制約から現在のコンピュータ でも不可能な場合がほとんどです.そこでミクロな構造の単位を粗視化したモデルを用い,本質を損なわないようにしながら 計算時間を短縮することが必須となります.新しい粗視化手法の提案と検証は,計算機レオロジーの研究の近年の大きな柱の 一つです. 計算機によるレオロジー研究のもう一つのアプローチは,物質のレオロジー(構成方程式)は既知として,そのような物質 が複雑な流路を流れる場合のマクロな流速や応力の分布を予測するものです.成形加工,特に射出成形への応用から始まった 研究ですが,現在は手法の進歩により自由表面を持つプロセス(ブロー/フィルム成形や塗布など)等へも適用され,複雑な 3次元形状の成形予測も可能になりつつあります.実際に金型等を試作するより大幅なコスト削減が可能なため,実用上も非 常に重要な技術になっています. このようなミクロとマクロの 2つのアプローチがこれまで主流でしたが,この 2つの融合(マルチスケールシミュレーション) の研究が既に始まっています.マクロな流動を予測する際に必要な構成方程式を,多数のミクロなシミュレーションを同時に 計算しながらその場で求めていくもので,近似的な構成方程式を用いたのでは得られない精度や情報が得られると期待されて います.また,ミクロ/マクロの中間のメゾ領域では,構成方程式と連続体力学,という従来の枠組みが使えず,構造から流 動までの一貫したシミュレーションが必要になります.本特集号の読者から今後このような新しい分野へ挑戦し,レオロジー の更なる発展と工業的展開に寄与される方が現れることを期待したいと思います.
